旅ついでに足袋
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 帰省がてらの出張の帰途、大阪での打合せを終えてそのまま東京へ向かっても良かったのだけど、平日で高速料金にそれほどお得感がないので、京都で途中下車(高速道路でもこう言うのか?)して半日ほど久方ぶりの都見物をすることにしました。というか、かねてよりのお目当てがあったので京都に向かった、と言うべきかな。
 そのお目当てというのは、「足袋」。旅の空の下で足袋購入。

 正月が明けてから、ちょいと気が向いたせいでずっと和服で過ごしていました。家の中でウロウロしてる分にはナニも困ることはないものの、さてちょいとコーヒー豆でも買いがてら散歩にでも出るかってぇ段になると、はたと困ってしまいます。なんと、足袋がない。そう。足袋を持っていなかったもんで、家の中では「旅館でくれる足袋のようなソックス」あるいは「ごく普通のソックス」を使っていました。いざ外に出るとなると、今ひとつ足元に違和感が。夏なら素足でごまかすんですど、さすがに寒過ぎる。
 というわけで、足袋を買いに行かなきゃねぇと思っていたところに、出張の通りすがりの京都。
 これは京都で足袋を買ってけってぇコトでしょ。
 かねてお目当ての足袋屋さんで購入させていただきました。ごくごく普通の足袋ですケド。

 ごくごく普通の足袋を、ごくごく普通の値段で、ごくごく普通に購入しただけではあるものの、その何とも言えぬ満足感といったら。これ全て、写真の足袋屋さんのおかげです。

 このお店、見ての通りのいかにも京都らしい古そうなお店。いったいいつ頃から足袋屋さんをやってるのか定かには知りません。まぁ、学生時代にもありましたから、少なくとも30年や50年はやってるんでしょうが、100年なのか200年なのか、はたまた300年なのか。まぁ、応仁の乱の時にぃってなハナシまでさかのぼるとも思えませんが。
 で、ですね。商い品は「足袋」だけです。何しろ足袋屋ですから。
 しかも、あんなのも、こんなのも、あらあらそんなのまで・・・てな具合に種々様々の足袋が置いてある・・・というわけではありません。それなりにお願いすれば奥の方からアレコレと出て来るのかもしれませんが、「ウチのんは、これです。お色はこの4つ。どれにさしてもらいましょ。」以上!

 「ごめんください」と店に入って足袋が欲しいと告げると、奥でミシンを踏んでいたご主人の応えは「いつ使うのか?」という質問。次いで、足を見せろと。靴下を脱いで素足を見せると、ご主人が手で足を触りつつ眺めて「ふむふむ」と唸ったかと思うと、店の棚から1足取り出して足裏に合わせてみて「うんうん」とつぶやくとスグに「こうして、こうやって。アカン、アカン、そこ持ったらアカン。ココを持って。」と履き方、足袋の扱い方を説明してくれながら試し履き。で、「コレですなぁ」。この間、ほんの数分。
 具合はどうかとか、キツくないかとか、確認や質問は全くナシです。
 この後、5cm角ほどの生地を4色並べた見本を見せられて色を選べば、はい終了。いかにも、あっけなく。なんともシンプル。

 当たり前と言えば当たり前なんですが、これは「職人」さんとのやり取りなんですよね。今どきの「接客マニュアル」に見かけるような会話は皆無です。にもかかわらず、ご主人の見立てによって試し履き用に出て来た足袋を手にした瞬間に、言葉や会話による援護など全く無いままほぼ完璧に「納得」してしまいます。「足袋を手にする」というところまでの過程に素人が何らかの意見を挟む余地などなくコレが最善のひとつであることを。そして同時に、ここから先、買うか買わないかやどう履きこなすか、さらに次にはどんな仕事を見せてもらえるのかまで、全くの自己責任の世界であることも納得させられます。
 一見、言葉少なくぶっきらぼうなコミュニケーションなんですが、その時点での必要なこと、解りたいこと、知らせるべきことなどなどは十分に詰まっています。そして、次の時点で、それらがどうなるのかが楽しみになるということまでも詰まっています。
 これはね、文化と言っていいと思います。
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by kaz-105 | 2011-01-13 15:14 | ぽよよんな日々 | Trackback | Comments(2)
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Commented by nen at 2011-01-14 09:16 x
いいですね~。京都の足袋やさんでの足袋購入。ボクもこういうの好きです。
「今どきの接客マニュアル」でのやり取りって、もっと掘り下げると

客『オレはこれを買ってもいいと思っているが、別にここで買わなくても他で買ったっていいんだぜ』
店『いえいえ、旦那、粗相はいたしませんから是非ウチでお買い求め下さいましよ』

ってな「客の圧倒的優位性」のある駆け引きが暗黙のうちに成立していて(もちろん暗黙であって言葉には出しませんが。あ、でもたまにホントに口に出してる下品な客もいるけど。)それがあの実に不自然なやり取りになっているんだと思うわけです。

一方、こういう職人さんのお店で買うと「限りなく対等」なやり取りで売買契約が成立する。そうやって手にしたものは満足できる確率がきわめて高いし、そもそも「買い物」なんて起源は物々交換なんだから、どっちが優位なんてハナシじゃなく、お互いが満足出来てナンボのもんですからね。
Commented by グリコ at 2011-01-17 16:40 x
いいですなぁ〜。なんでも日本が世界に誇るタイヤ、ブリジストンさんの前身は足袋屋さんだったそうです。


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