プラスティックとメタル
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 50年代、60年代と椅子を作る素材や工法のバリエーションがどどっと増えた。これは椅子に限ったことじゃなくて、世の中に「工業製品」と呼ばれるものが溢れ出した時代ってこと。
 今回のエントリーで紹介する2脚は、その工業製品たるものの中から、プラスティック代表と、メタルびっくり系代表。

 右側の赤い座面のヤツ、アッキレ・カスティリオーニ(Achikke Castiglioni)のデザインしたメッザドロ(Mezzadro)という椅子。カスティリオーニは兄弟で事務所をやっていたそうなので兄弟の共同作品と言うべきなのか、アッキレ個人の作品なのか、あちこちの解説を探すと両方出て来てどちらが本当なのか分からない。赤い座面は、プレス成形した金属製で、トラクターの座面だそうな。トラクターの座面をそのまま用いたのか、トラクターの座面にヒントを得て似た形の座面にしたのか、これまた両方の解説が出回っているのでどちらが「史実」なのかは知らない。とにかく、メタルに塗装した座面に、スティールバーを折り曲げた脚を付けて、先端にくっつけた倒れ止めは木製。座面そのものは冷たく堅いわけだが、脚が微妙なスプリングになっていて意外に座りやすい。脚の木製部分に靴のかかとを引っ掛けておけば、「手持ち無沙汰な足」にならなくていい按配。とまぁ、実に良く出来ている。
 このおもちゃは、座面をスティールバーの脚に固定する蝶ネジを懸命に再現してあるとか、座面の塗装の赤色の発色が何とも素敵だったりと、モデル化するにあたってのこだわりが伺えて、なかなか素敵。たぶん、赤色の塗装にこだわったのは「仕事モード」というより例の「趣味モード」が出たんだろうなと、このおもちゃの企画者の所有する車を思い出しながら想像するのも楽しい。
 ところで、カスティリオーネというと、四角い大理石のベースから大きく円弧を描きながらスティールのアームが伸びた照明器具、その名も「ARCO」というのを思い出す。ゴージャス系イタリアモダンなインテリアには定番のひとつで、それこそバブルの頃には分譲マンションのモデルルームやら、インテリア関係に限らず各種雑誌のグラビアやら、そこら中で目にしたものだが、あんなにいっぱい在ったARCO、今はどうしているのやら。ちなみに、宮脇檀建築研究室のレセプションにもARCOが在ったが、ソレが現在どこに在るのかは確認済み。

 左の緑一色のヤツは、ヘルムート・ベッツナー(Helmut Batzner)によるボーフィンガー・シュトゥール(Bofinger-Stuhl)。この方も兄弟でベッツナー建築事務所なんてのをやってたらしい。樹脂の一体成形で安価な大量生産に向いていて、樹脂だし水に濡れてもへっちゃら、スタッキングもOKと、コンビニエンスの極みのような椅子。サーリネン&イームズはFRP(ガラス繊維で補強されたプラスティック)で椅子を作ったけれど(シェルチェアなど)、このボーフィンガーは初めてプラスティックのみで完成させたのだとか。ということは、樹脂の一体成形+スタッキング可能という椅子は高いのから安いのまで現在では実にたくさんあるのだけど、それらの「最初」ってことになる実にありがたい椅子というわけだ。
 で、このおもちゃ。本物がプラスティック一体成形なわけだから、このおもちゃは「本物と同じ製作法で出来ている」ということになるわけで、なるほど良く出来ている。ただ、本物も「安物だけどイイ椅子」という性格のものだけに、おもちゃがこれまた安っぽい。というか、正真正銘の「おもちゃ」に見える。つまりは、モデルとしてまさに「良く出来ている」ことなるんだけど、それってちょと微妙。


 この「おもちゃ」が欲しい方は、レアック・ジャパンへどうぞ。
 オンラインショップもあるようですヨ。
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by kaz-105 | 2007-02-11 18:01 | 建築雑感 | Trackback | Comments(0)
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