幻のおじゃこ
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 ずっと以前に帰省した際に親戚の方からたいそう美味しいおじゃこを頂いたことがある。好物なので帰省するたびに瀬戸内産のおじゃこを買い求めて来るのだが、その時頂いたおじゃこは、いつも買い求めて来るおじゃことは一線を画した格別の美味さ。おじゃこがぱんぱんに詰め込まれた白い紙袋の端をくるくるっとねじっただけの簡素な包装が印象的であった。以来、あれと同じおじゃこが手に入らないものかと思い続ける「幻のおじゃこ」となっていた。
 今回の帰省で、ついに再会。
 いたづらに手を煩わせることになっても恐縮なので、どこへ行けば手に入るのか尋ねようと思いつつ尋ねられないでいたのだが、とうとう我慢しきれなくなって入手先の質問をすることが出来た。ご近所の方が細々と作っているらしい。

 写真左は、その「幻のおじゃこ」を包装してくれている手元。ざるに入ったおじゃこを、座布団にちょこんと座ったおばあちゃんが白い紙袋に詰め込んでいく。台所用のごく普通のハカリで計量して、ちょちょっと足したり減らしたりして、くるくるっと紙袋の端をねじって出来上がり。そうやって「商品」を整えてくれてる間に、「まぁ、お食べてください」と言ってくれるもんだから、時々ざるに手を伸ばしておじゃこをつまむ。旨い。
 「昨日の朝まで海で泳いどったおじゃこですけん。」・・・旨いはずである。
 「他所は自動釜とか使うんですが、ウチは小規模じゃけん、みな手仕事でやりよんです。」・・・大量に作れず、従って出会う機会が無いはずである。
 「その日、その日でおじゃこが変わるけん、全く同じ味にはなりません。」・・・そうそう!塩味が薄くて、おじゃこそのものの味がするのよ、ここのは。
 買い求めて、さぁ帰ろうかという段になって、おばあちゃんがちょっと待っててくださいと言いつつ大きな冷蔵庫から「釜揚げ」というのを出してきてくれた。今朝まで海で泳いでいたおじゃこを、釜で茹で上げたもの。これを天日で干すと「おじゃこ」になる。これがまた、格別。

 写真右は、おじゃこを干しているトコロ。これは他所のお店のモノで、「幻のおじゃこ」ではないが、たぶん同じように干すのだろう。麻布と思しきざっくりした布の上に、釜で茹で上げたおじゃこを薄く並べて干している。時々、おじさんが出て来て、おじゃこを集めてかき回してまた薄く広げて干す。これを繰り返すらしい。

 これで次回からは直接買いに来られると小躍りしたい気分で店を後にした。
 そう、「店」とは書いたが、一般的な常識からは「店」には見えない。倉庫、もしくは工場である。それも海からの潮風をモロにあびる立地のせいか、全面的に錆び仕上げ。元鉄板が錆であちこち赤茶色の網状になっているような場所である。とてもじゃないが、ココでおじゃこが買えるとは思えない。そもそも、ご近所お馴染みの「知っているヒト」だけを相手にする程度しか作っていないのだから、店に見える必要など全く無い。
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by kaz-105 | 2007-04-30 15:41 | ぽよよんな日々 | Trackback | Comments(0)
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