全く個人的に「ゴシゴシ・ベートーベン」と呼んでおります。何のことかというと・・・ 毎年恒例なんだそうですが、某国産車メーカーの後押しでウィーンフィルの方々30名ほどが来日して行う演奏会があります。この演奏会ではメインディッシュとしてベートーベンの交響曲を1曲演奏するのがお約束になってるようで、このベートーベン演奏をして特に「ゴシゴシ・ベートーベン」と呼んでいるわけです。 「ゴシゴシ」てな表現をすると、某方面の友人ですと「ゴシック風なの?」なんて反応が返って来そうですが、そうではありません。弦楽隊(特にバイオリン)の方々が、気合い入れまくりで煙が出るゾ!ってな勢いで「ゴシゴシ」と弓を擦るってのが、その呼び名の理由。なぜにそれほど必死で擦るかというと、「30名」という楽団人数によるものだろうと思っております。 つまり。 本来は50名とか60名とか(実はちっとも詳しくないのでホントは何人か知らないんですが)もっとたくさんの頭数で構成されてるハズの交響楽団を、ほぼ半分の30名にして演奏すると。バイオリン隊であれば、本来10名様のところ5名様で演っておくんなまし、てな具合ですね。音量、半分になるはずです。ところが、元々2名様しか居ないパートを、半分の1名様にする・・・ってぇのは、なかなか難しい。ということは、必ずしも全てのパートが等しく半分の人数(=半分の音量)になるわけじゃないと。管の方々の多くがこれにあたります。 バンド演奏において音量バランスが狂っちまうと致命的に雰囲気変わってしまうはず。ってことは、人数の減った(つまりは音量の小さくなった)パートに合わせるべく、人数減ってないパートは減ったフリして「小音量で」演奏することが求められるわけですが・・・管楽器で小音量演奏するのってそりゃぁもう難しいはず。つうことは、半分の人数で半分の音量になってしまうパートに減ってないフリをして「より大音量」の演奏をしてもらってバランスを維持する、てぇことになるはず。かくして、弦楽隊は半分の人数にもかかわらず、全部居るかのような音量を出すべく、各自が倍ほど頑張る!ってぇことになってるんでしょう。もう、今にも煙出して燃え出しそうなほどの勢いで弓を往復させております。 で、煙吹きそうな演奏から出て来る肝心の「音楽」はと言うと・・・これはもう、絶品。 感嘆、感激の演奏です。前回は5番、今回は1番を聴かせていただきましたが、さすが、ウィーンフィル。大満足。明確な意図と意志を持って、30名という小編成でこそなし得る表現をしてるはずなので、フルメンバーの演奏とは何らか異なる表現になってるのでしょうが、比べるのは無意味というもの。これはこれ、あれはあれ、です。 今回の演奏会、前半の1曲は「ウェーバー/クラリネット協奏曲第2番」でした。これを聴いてる時に、「あれれ?音がなんか今ひとつ?」って感想を持ってしまいまして、「演奏自体が悪いはずないし、ホール音響のせいか?」と席の位置とかハコの設計とかを一瞬疑っちまいました。言葉で表現するのが難しいんですが、音の輪郭が甘いというか、角が立ってないというか。楽器ひとつひとつが鳴ってて、それらが一体になってひとつの響きになってるんじゃなく、最初から音が混ざって発音してるような感覚というか。とにかく、以前に聴いたことあるのとは違うゾと。きっと、このホールのこの席は「ハズレ」だったんじゃないか?とか。 後半の1曲目は「メンデルスゾーン/バイオリン協奏曲」。音の印象が変わりました。ちゃんと楽器ごとの表情が伝わってくるように。「なんだ、いい音じゃん。この席がハズレってわけじゃなさそうじゃん。」 そして、後半2曲目。最後の曲は「ベートベン/交響曲第1番」。最初の1音から、全く別物の響き。「コレよ、コレ!この音だよぉ!」。無意識のうちにってぇことは彼らに限ってないでしょうから、意図的に演奏し分けてたんでしょうね。やられました。 ま、つまりは、前半戦の音について、聴く側のレベルがついて行ってなかったってコトですね。単なる聴衆としても、まだまだ修行が足りません。 写真は、大満足で席を後にする際に、ちらりと振り返った舞台風景。着目していただきたいのは、舞台上に並んでる椅子の少なさです。この「ハーフ・オーケストラ」ってぇのも、癖になりそうです。
by kaz-105
| 2009-04-13 12:00
| ぽよよんな日々
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